癌との関係

人はよく一元的な見方に陥りがちで、
外科の講義を受ければ、外科の治療が何より大切に思え、
抗腫瘍薬の講義を聴けば、薬が必要な気がし、
放射線の講義によって、放射線治療をもっと行うべきだと考える。
そして、緩和ケアの講義の後、
なんで必要のない治療でQOLを下げるのかと疑問符をあげる。


正解はないと思う。
どれも正しいし、どれも間違ってる。
なぜなら、人は皆違うから。


緩和ケアに踏み出すこと、死を受け入れ、残りの生を生き抜くこと。
どんなにか大変で、辛い道になるか分からない。
勇気ある決断だ。


その一方で、
新薬の登場を待ちわび、僅かな希望の光に向かい、治療を行う。
数々の強烈な副作用に耐え、耐え切れずに涙する。
勇気ある決断だ。


医者は自分の専門分野の治療を行わない患者に対し、
「なんでやらないんですか?」とは聞けないのではなかろうか。
同じように自分の専門分野が優れている事ばかり、
アピールすることはできないのではないのだろうか。


なぜなら、人は皆それぞれ異なるから。


「もっと、早くまわしてくれれば助けられたのに…」
きっとそうなのだろう。


けれど、それが患者さんが数ある選択の中から選んだ道なら、
それが正しい道だったのではないのだろうか。


もちろんそのために、
医者は考えうる限りの道を示し、それぞれの特徴を把握し、
道を選ぶ患者さんを支えていく必要があるのだろう。


そうして、患者、家族、友人、医療者が共に生きることは、
緩和ケアのみならず、全ての医療に必要なのかもしれない。


そんなことを思いながらテスト勉強に戻る。